アドバンテージ・マトリックスがわかりにくい理由|事例付き

アドバンテージ・マトリックス-がわかりにくり理由

アドバンテージ・マトリクス(Advantage matrix)とは?

アドバンテージ・マトリスクは、ボストンコンサルティンググループのRichard Lochridgeが考案した環境分析のフレームワークです。
業界や企業を分散型事業(Fragmented)、特化型事業(Specialized)、規模型事業(Volume)手詰まり型事業(Stalemate)に分類し、自社や自社の業界の収益性(優位性)を高める方法を考えるために使います(Jo, 2015)。

アドバンテージ・マトリクスがわかりにくい理由

アドバンテージ・マトリクスがわかりにくい理由

一般的にアドバンテージ・マトリクスは次のように説明されます。

“まず、縦軸に「競争上の戦略変数」、横軸に「優位性構築の可能性」を取ります。”

早くもこの時点で「??」となります。なぜなら「競争上の戦略変数」と「優位性構築の可能性」という言葉が抽象的過ぎて何を指しているのかわからないからです。実は日本語表記では抽象的ですが、英語表記では以下のようにシンプルです。

競争上の戦略変数はNumber of approaches to achieve advantage、優位性構築の可能性はsize of advantageです(Bold North Strategy Partners, BCG Advantages Model)。

これだけではまだわかりにくいので、以下のように言い直すとアドバンテージ・マトリクス分析が何をしているのかわかりやすくなります。

競争上の戦略変数:
その業界・企業が扱う製品・サービスの差別化ポイントの多さ
競争上の戦略変数は、消費者が製品・サービスの価値をどれくらい多くの観点で決定しているかを示しています。

優位性構築の可能性:
大量生産でコストを下げられる可能性

優位性構築の可能性は、大量生産したときのコストダウンへの期待性です。規模の経済性の働きやすさとも言えます。

わかくやすくしたアドバンテージ・マトリクス

上記を踏まえた上でアドバンテージ・マトリクスを作成すると以下のようになります。単に縦軸と横軸の名称に上記の言い換えを追記しただけですが、理解しやすくなります。

こちらの図を使ってそれぞれの事業型を説明していきます。

わかくやすくしたアドバンテージ・マトリクス

分散型事業(Fragmented)

分散型事業(Fragmented)

マトリクスの左上に位置される分散型事業は、差別化された製品・サービスから利益を得られるが、大量生産によるコストダウンには向いていない事業です。

例えば、地域密着型の飲食店などがこれに該当します。町のパン屋で考えてみましょう。パン屋の顧客価値は、単に価格だけでは決まりません。製品の種類の多さ、店の雰囲気、焼き立てかどうか、米粉パン、カロリー、食感、店の立地など多数あります。つまり、パン屋は製品の差別化ポイントが多いのです。安ければよいという製品ではありません

一方、町のパン屋が大量生産によるコストダウンをしようとしても、利益を高めるのは困難です。店舗がひとつしかない町のパン屋は、原料を大量仕入れをして大量生産しても、少しはコストダウンになりますが、そもそもその町にそれだけ顧客がいるのか、賞味期限が短く廃棄が増えないか、安くすれば顧客は増えるのかなど懸念点の方が多いのです。

分散型事業(Fragmented)
パン屋の価値は多様

価格はあくまで多数あるパンの価値のひとつにすぎないので、大量生産してコストダウンしようとするよりも、価格が高くなっても常に焼き立てを提供したり、低カロリーパンを開発するなど差別化をする方が利益を上げやすいのです。

特化型事業(Specialized)

特化型事業(Specialized)

マトリクスの右上に位置される特化型事業は、製品・サービスの差別化ポイントが多く、大量生産によるコストダウンも可能です。出版社を例に説明します。

出版社は本を販売することを事業としていますが、本と言ってもファッション雑誌、漫画、参考書、ビジネス書などその種類は多様です。ファッション雑誌に絞っても、20代女性向けや中年男性向けなど内容で差別化可能です。

また、大量生産によるコストダウンは向いています。たくさん印刷すればそれだけ一冊あたりのコストは下がります。パン屋と異なり、まとめて印刷して保管しておくことも可能です。

つまり、ニッチなジャンルで利益を上げることもできれば、雑誌など広く読まれる書籍を大量に生産して収益を上げることもできます。

規模型事業(Volume)

規模型事業(Volume)

規模型事業は、製品・サービスの価値の種類が少なく、大量生産によるコストダウンが可能な型です。規模を大きくすることで収益が上がります。特に事業の発展段階にある半導体や鉄鋼事業が該当します。

鉄鋼や半導体事業で収益を上げようとしたとき、製品の機能やデザインで差別化することは困難で、それよりも大量生産によるコストダウンの方が効果があります。

そのため、鉄鋼や半導体事業の研究開発は、製品の付加価値の開発よりも製造プロセスの改善に重きが置かれます。

手詰まり型事業(Stalemate)

手詰まり型事業は、他の事業とは時系列が異なります。手詰まり型事業は、差別化も大量生産によるコストダウンも一通りやり切った後に行き着く分類であり、これ以上差別化も大量生産によるコストダウンも望めない状態です。いわゆる成熟産業がこれに該当します。例えば石油です。

石油の中でもガソリンを例にするとわかりやすいです。皆さんはガソリンを給油する際、何に価値を感じてガソリンを選びますか?

おそらく、ほとんどの方がガソリンそのものではなく、そのときのガソリンの価格とガソリンスタンドの立地で決めていると思います。あのガソリンスタンドのガソリンは他店とは一味違うと思うことはないでしょう。つまり、ガソリンそのものは差別化ポイントがとても少ないのです。

ガソリンの差別化は困難

ガソリンをさらに大量生産をしようとした場合、莫大な設備投資費が必要ですが、その一方で需要が今後増大する可能性は低く、投資に見合ったリターンを得られにくいです。費用対効果の高い投資はすでにやり終わっています。

事業が成熟して手詰まり型になった場合、これ以上の収益改善は難しいため、経営者は他の事業へ優先的に投資します。

YouTube動画のアドバンテージ・マトリクス

日本成長戦略研究所代表の中丸秀昭さんが解説されている動画があります。

グロービス学び放題のアドバンテージ・マトリクス

このコースについて

アドバンテージ・マトリクスは、業界によって異なる事業特性を把握するためのフレームワークです。業界のタイプによって事業の経済性が異なり、それは事業の成功の可能性も異なることを意味します。自社事業の方向性を検討する際などに役立てましょう。

コース内容

  • 事例①-1:北池さんの悩み
  • 事例①-2:斉藤先輩が伝えたかったこと
  • アドバンテージ・マトリクスとは
  • 事業タイプ①:分散型事業
  • 事業タイプ②:特化型事業
  • 事業タイプ③:手詰まり型事業
  • 事業タイプ④:規模型事業
  • アドバンテージ・マトリクスの活用例
  • 事例①-3:北池さんの気づき
  • 留意点

こんな人におすすめ

・経営戦略の基本的な知識を学びたい方
・事業計画などを作成する業務に携わっている方
・事業計画などを判断する業務に携わっている方

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参考文献

Bold North Strategy Partners, BCG Advantages Model
Jo Whitehead(2015)Advantage Matrix, 12, Strategic Management.

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